第10章 事件編
けれどルドガーはあなたの安全を確認したあと、そっと下ろして自分の後ろに隠す。
彼が突き進んで憤怒を向けたのは、怯えて後ずさる若騎士ターシャだった。
「お前か、この野郎ッ! 俺の番に何をした! 殺されたいのかッ」
「ひいっ! ルドガーさん、ど、どうしたんですか! 俺は何もっ」
胸倉を掴み上げようとする彼を、あなたは背を掴んで必死に抑えようとする。
ジュリスも自分より体格のいいルドガーを止めようと、「落ち着け! こいつは何も知らないんだ!」と言って引きはがす。
あなたはまずミザロと一緒に、この場にいる男三人に事情を説明しようと試みた。
催眠療法をかけ、判明したこともすべてだ。
ルドガーは起こった事実よりも、まずたった今行われていた施術に対し、かなり衝撃を受けた様子だった。
「お前が……催眠をやったのか?」
「そうなの! うまくいったの、すごくない? 初めてなのに!」
思わず興奮してはしゃぐと、彼は金の瞳を困惑したように動かし、一方であなたの両肩にそっと手を置いた。
「……ああ、すごいぞ。よくやった。けどな……ミザロ、お前、そんなことをに教えたのか」
「ええ。彼女の才能が花開きました。すごかったですよ、術のあとの騎士の顔……ぼうっと恍惚状態に陥り、心をすっかり開いてしまった様子で。……#名無し#さん、あなたのやり方は正直勉強になりました。私は真似しませんが」
「えへへ。そんなに褒められちゃったら照れます〜」
調子よく頭をかいていたら、ふと気まずそうな様子のターシャに気づいた。
「……あっ、本当にごめんなさい! 勝手なことして、しかもあなたは巻き込まれただけなのに…!」
「いや、全然、自分は大丈夫なので」
またへらっと表情を緩める騎士は、近くで睨みつけているルドガーを気にしつつも、大変なことに気づいた様子で立ち上がった。
皆とは違う薄灰の制服を着た、袖口に階級章のある隊長だ。