第10章 事件編
外でのんびり過ごしていたら、夕飯の時間が近づいてきたため、部屋に帰ることにした。
寮の建物に入り、二階に上がろうとしたところ。裏口に続く左廊下の隅に、誰かが立っていた。
髪を短く刈り上げた、同じ年ぐらいの若い青年だ。
たくましい体躯に騎士の制服を着ていて、柔和そうな、平凡な顔立ちだった。
「こんにちはー」
「…………」
あなたは愛想よく通りすがろうとするが、彼は前を見つめたまま答えなかった。
無視?
そう思いつつ気にしないようにしていると、彼が近づいてきた。
そして目の前で立ち止まり、あなたを焦点の合わない瞳に映す。
「ちょっと、大丈夫ですか? 具合悪いんですか」
心配になり目の前で手を振ると、彼は抑揚のない声で言った。
「……さん。守護者に会わせます。……こちらに来てください。ある魔術師より……」
「…………はっ!?」
つい大声で反応するが、彼は台詞を言い終わったかのように、ぼうっとして微動だにしない。
ちょっと待ってほしい。
守護者に会えるのだろうか?
魔術師というのがよく分からないが、この騎士はもしかして、伝言役?
「本当にここに守護者さまが来てるんですか? ねえっ」
「…………早く、来てください。時間が、もちません……」
明らかに言わされている感のある騎士を前に、あなたは混乱に陥る。
騎士に近づくなとルドガーに言われた。
でも、もしすぐそばに彼女が来ているのなら。
「いや、危ないよね。……でも、本当だったら……けどここは騎士団だし、入れるの?」
それに、魔術師という言葉が気になる。誰かが手引きしているのだろうか。
彼女は位が高そうだから、そうであっても不思議じゃない。
「とにかく、どこに行くんですか? 教えてください! あとで行きますから!」
そうやって寮の玄関口で、自分より背の高い騎士を問い詰めていると、後ろからもう一人やってきた。