第10章 事件編
翌日、あなたは騎士団領内の隅にあるベンチにいた。
周りを緑に囲まれ、静かで心地よい場所だ。
「はあ……良い天気。風もきもちいいー」
昨日あんなことがあったわりに、気分は穏やかだった。
ルドガーが帰宅した後、全部彼に喋ったせいもあると思う。
もちろん、彼の反応は芳しくなかったが。
「……そいつがそう言ったのか? 騎士を見ておけと」
「うん。どういう意味なんだろう。騎士さんたち、良い人だよね皆」
呟いたが、ルドガーは険しい顔つきで考え込んでいる。
そして彼を刺激したのは、これだけではなかった。
守護者の名前だ。
あなたはありのままを話した。
「――だから、名前そのものは言えないんだけど、教えてくれたんだ。これって、一応信用してるってことかな」
「どうだかな……第一、それが本当の名前かもわからないだろ」
確かにその通りだが、これまでの彼女とのやり取りの中で、あなたは半分以上信じてしまっていた。
少しは心を開かれているのかと。
「とにかくだ、。奴の名前の話は、一切誰にもするな。お前の心の中にしまっておけ。万が一にも危険が及ばないように」
疑わしいと言いながらも、ルドガーはあなたの身の安全を第一に考えている。
あなたは彼の言葉を受け入れ、固く頷いた。
「騎士にも気をつけろよ。これまで通り、怪しいやつには近づくんじゃないぞ。いいな?」
「うん。わかった。大丈夫だよ。ルドガーも気をつけてね」
あなたが彼の胸元にもぐりこみ、甘えるようにぎゅっと抱きつくと、「俺は平気だ」と柔らかく笑う声が聞こえた。
またぴりっとさせてしまったが、出来事を共有して、彼と一緒にいることを確認すると心強い。
それにここは安全な場所なのだから。
あなたは守護者に対し、信じて近づきたい気持ちと、近づいて大丈夫なのかという恐れを同時に抱いていた。