第10章 事件編
彼の表情を見ればわかる。
ずっとお世話をしてくれていたのに、急な変化についていけないのは当然なはずだった。
「そうだよね、ごめん……。私も、自分でもなにかおかしいなと思いながら、我欲のままに行動しちゃって。最近そうなんだ。なんでだろう」
別に張り切って運動してるだけだが、妙なモチベーションの上昇は感じていた。
「そんなことはない。お前は温かくて、優しいままだ。俺は分かってるぞ。……だが、あいつからの接触はまだないか?」
金色の瞳が、心配の中に鋭い感情を滲ませる。
守護者のことだとすぐに悟った。
「ううん、まだないよ。もう忘れたんじゃないかな」
あなたが半ば投げやりに言うと、彼は答えなかったが、その目つきはけっして信じていない様子だった。
二人はひとまず、またあとで会おうと約束する。
仕事頑張ってね、と背中に声をかけると、ルドガーも振り返り笑みを浮かべて去っていった。
あなたはひとり、守護者のことを考えた。
思い出すと、苛立ちがわいてくる。
正直に言うと、大きな反発心である。
「なによ。加護を与えるとか言って、私のことなんかどうでもいいんじゃない」
そんな風に素直な悪態が出ることは、自分でも驚きだった。
帰宅して夕飯の支度をする。
もうすっかり頭の中は落ち着いて、鼻歌を歌いながらルドガーの帰りを待っていた。
魔術の訓練だってうまくいってるし、体力もこの調子ならもっとつきそうだ。
なにより、愛する彼といつも一緒に過ごすことが出来るし。
「あーあー。もう忘れよう。一方的な関係なんて、続くわけないんだから」
妙に感傷的な気分が漂ってきたが、食卓に皿を並べているときに、異変が起きた。
頭の中で、一か月ぶりぐらいに声がしたのだ。