第9章 お世話編
今日は休暇の中で、きりのいい日でもある。数日に1回の、医術師フォロロットゥールによる往診があるのだ。
午後に寮部屋にやって来た医師の前で、あなたはいつもと違い異様にもじもじしていた。
ちなみに彼に体の回復のことを告げると、たいそう喜んでくれた。
「ふむ、本当に素晴らしいね。そろそろかと思ったが、思ったよりも回復の上昇率が高い。それにもっと気になったのは、こうして対面してもわかる、魔力の増大だ。これまではほんの少しずつ上がっていたものが、ここ最近の平均から10倍近く伸びている」
「本当ですか? すごーい」
あなたは純粋に喜び、終始照れていた。
お世話になっている先生に褒められることは、特別に嬉しくもあった。
フォロ医師は昨夜あなたに付き添ってくれた看護師からも話を聞いていたようで、こんなことを言った。
「だが、昨日の時点では前と変わらない量だということだったんだよね。何かあったのかな」
「いやっそれは……」
口ごもったあなたはルドガーに助けを求めた。どうしても自分の口からは言えない。
すると彼は俺に任せろといった顔つきで頷いた。
「先生、実は昨日の夜、10日ぶりにを抱いた。ゆっくりしたから心配はいらない。だがそのせいで、俺の力がに行き渡り、魔力となって蓄えられたのではないかと思ってるんだが」
「……ん? どういうことだ?」
医師はあくまで冷静に、獣の彼の率直な意見に耳を傾けた。
あなたは恥ずかしくてたまらなかったが、フォロ医師は普通に聞いてくれてるし、こんな時だけルドガーのまっすぐさに密かに感謝も生まれた。
「なるほど。君の言っていることは分かるよ。だが医術師としては、私は気のせいではないかと考えるけれどな……」
白い顎髭に触れながら、彼は椅子に深く腰掛ける。
「魔力の循環というのは、たとえば契約関係にある魔術師と使役される対象の間では、ありえる話だ。内容にもよるが、けっして夢物語ではない。……けれど、君たちの間に契約はないだろう? 検査や採血の結果から見ても二人は完全に異種族で、生物学的にも魔術的にも、何も繋がりは見られないんだ」
あなたもその客観的な事実に完全に納得しそうになる。