第1章 出会い編
それは、細長くどろどろ溶けた液体の塊のようなもので、流動的ながら天井には届かずとどまっている。
「きゃあああぁぁぁ!!」
あなたは思いきり叫んだ。
そしてルドガーの太い首に掴まり、全身を隠そうとする。
「なっ、おい、どうした」
「なにあれ!? 家に入ってきた、助けてルドガー!!」
パニックになりジタバタすると、彼はあなたの背を抱いたままゆっくりと下ろす。
そして一旦自分が盾になるように立ち、焦り気味に振り返った。
「あれが怖いのか? あれが先生だぞ」
「⋯⋯えっ!? 嘘でしょう⋯⋯?」
「本当だ。粘流体種のゲアト先生だ。年寄で優しいから怖がらなくていい」
ルドガーはあなたをなだめながらも、医師に振り向く。そしてこうお願いした。
「先生、が怖がっている。俺達に似た姿になってもらえるか」
「ああ。別にいいけどね。繊細なお嬢さんだな」
紳士的な声音で彼は後ろを向いた――のかは分からないが、きゅるきゅると妙な音を立てて変形していった。
その間、ルドガーはあなたをじっと見下ろす。
どこか自信を欠いたような眼差しだ。
「騒いでごめんね、びっくりしちゃって⋯⋯あんなの初めて見たから⋯⋯」
「いや、いい。だが⋯⋯お前には俺の本当の姿を見せないほうがいいかもしれないな」
そう呟かれた声には覇気がなく、彼らしくなかった。
そんなに恐ろしい姿なの?とつい思ってしまったものの、さっきの反応は痛恨のミスだったと気づく。
「はい出来たよ。これでいいかい」
「あっはい⋯」
微妙な空気のまま、あなたは指示されて木彫りのベッドに寝そべる。
近くにはルドガーがいるから安心した。
だがどろどろの液体だった医者は長い銀髪の麗しい男性に変化していて、ふたたび言葉を失う。
耳は長く尖っているが、ほかは背が高すぎる人間の男のようだ。
「あの⋯⋯本当にお医者さんですか?」
「そうだよ。獣医だけどね。お嬢さん、ちょっと失礼」
いきなり着ていたルドガーの大きなシャツをまくられる。
恥ずかしくてたまらなかったが、もう大騒ぎできる雰囲気ではなかったため、静かに言うことを聞いた。
ゲアト先生と呼ばれる医者は、あなたの体を神妙に触診していた。
たぶん魔法のようなものも使われた。きらきらした細かい光に時折包まれたのだ。