第9章 お世話編
「――――ッッッ!!」
驚いたのは口をあんぐりと開けるあなただけじゃない。
ぼたっ、ぼたっと鮮血を流し、顔も軍服も血まみれで立ち尽くす、ルドガーもだった。
彼は両手に長剣を構えたまま、何が起きたか分からないように、主人を目に映す。
「…………っ!? ゼイラン様、いったい何が、……ッ!! に何かあったのか!?」
訳もわからず、突然戦場から召喚された彼は、混乱に陥り辺りを見回した。
「私は大丈夫だよ、ルドガー! あなたこそ、その血どうしたの! 怪我したの!?
やだ、早く治して! ゼイラン様助けてー!!」
「いや、怪我はしてない、これは返り血だから大丈夫だぞ!」
再会して大騒ぎする二人を、主人はまた呆れた表情で見つめている。
「お前らの熱気が羨ましいよ。この程度の任務でわめくな、ガキどもが。ルドガー、報告しろ」
「……ああ! 魔物はあらかた倒したが、最後の大群が押し寄せてきて、――とくにあの三頭獣のデカブツは、俺がいないと少し手こずるかもしれない…!」
「そうか。それぐらいなら俺がやってやる。お前はそばにいてやれ」
彼はくるりと背を向け、あなた達が驚いている間に、今度は窓をきちんと開けてそこから飛び降りた。
呆然と見ていると、彼は黒い翼を出して空を飛び、消えていった。
「えっ……どういうこと…? ルドガーの代わりに行ってくれたの? いいのっ?」
「ああ、大丈夫そうだ。……、お前は平気か? 遅くなってすまない……」
まだ彼は落ち着かない様子で、肩で息をしている。
起き上がろうとするあなたを、優しく支えてくれた。
そして彼の方から安心を求めるように、全身であなたを抱きしめた。
沸騰するような熱と鼓動が伝わってきて、今すぐに手を回して抱きしめたい気持ちになった。
「大丈夫だよ。帰ってきてくれて嬉しい……」
「俺もだ。早くお前に会いたかった」
彼は血がついた手の爪をしまい、あなたの顔を覆うと、唇を塞ぐ。
押し付けるようなキスにドキドキして、離されたあとは、ルドガーは眉を下げて笑んだ。
「悪い、血がついてしまったな。風呂に入るか」
「うん。一緒に入ろう?」
夜は遅くなっているが、今はいっそう離れたくなかった。