第9章 お世話編
十日目になっても、体の調子は変わらず横ばいだ。
正直、悪くなればあとは上がるだけだと楽観視していたため、焦りが出ていた。
それに買い物以外、彼をずっとこの寮部屋に閉じ込めている。
戦うことも体を動かすことも出来ないし、獣でなくとも一人の男性として、申し訳なさがつのった。
「ルドガー、外に出かけていいよ。そうだ、森に行ってきたら? 運動したほうがいいんじゃないかな」
「なぜだ? 太ったか? 家で鍛えてはいるぞ。ほら見てみろ、力こぶだ」
袖をまくり、まったく衰えてない筋肉自慢をしてくる。
そういうことではないのだが。
あなたがたどたどしく撫でて褒めていると、彼は思いついたように部屋のバルコニーの窓を開けた。
「外は寒いからあまり良くないかと思ったが、少し出てみるか。今日はわりと日が照っているな」
それは良い案だと思い、ぱっと顔を上げる。
彼はあなたに分厚い服を着せ、広いバルコニーのチェアに座らせてくれた。
騎士用だから大きく、縦に寝そべられる心地よいスペースだ。
ルドガーは二席をくっつけて、大柄な体躯がはみ出す勢いであなたを抱き寄せ、一緒に寝そべる。
持ってきたブランケットで二人の体を包み、ぬくぬくして嬉しくなった。
「ねえ、これ最高。もっとしようよ」
「そうだな。でもお前が風邪引いたら大変だ」
「大丈夫だよ、あなたがいるからあったかいし」
顔を彼の胸元にこすりつけて、思う存分匂いを吸い込んだ。
濃い紫に変わるきれいな夕暮れよりも、彼の包容感に夢中だった。
「ねえキスして、ルドガー」
「……ん? いいぞ……」
彼の精悍な顔がこっちを向き、唇が近づいてくる。
優しく触れるようなキスを何度かされて、自然と笑顔になる。
けれど彼は、少しせつなげにあなたの頬を撫でたあと、そこにちゅっとキスをしてまた抱きしめた。
実は最近、気になっていることがあった。
ルドガーは毎日抱きしめてくれて、キスもしてくれる。だが不思議なことに、休暇に入ってから、彼はそれ以上求めてこないのだ。
これはどういうことなのだろう。