第9章 お世話編
「どういうことだ、先生」
「落ち着いてくれ。これはある意味予測していたことだ。症状は確かに出る、出なければ逆に不自然だよ。今は瘴気を、塗り薬という保護膜なしに体に浴びているんだからね。でも魔力が増えているということは、前向きな兆候なんだ。このまま増えていけば、肉体がもっと強くなってこの世界に適応し、症状は治まってくるだろう」
それは至極冷静な彼の判断だった。
つまり今はつらいけれど、だんだんと治っていく可能性があるということなのだ。
「本当ですかっ? やったあ!」
「……お前は、どうしてそういう……本当に分かってるのか!? また体が大変な状況が続くんだぞ!」
「あ……ごめん。ルドガーにまた迷惑かけちゃうね」
「そんなことは問題じゃない! 迷惑なわけがあるか、俺はお前の番なんだッ!」
本気で怒り、彼はあなたの体にがばりと覆いかぶさって来た。
力は優しいがぎゅっと抱きしめたい気持ちが伝わってきて、自分の軽率な言動を後悔する。
「ごめん、ルドガー……ついポジティブに考えちゃって…」
「それはいい……良いことだ。でも……俺は……っ」
二人の感情高ぶるやり取りを、医術師フォロは温かい眼差しで見つめている。
「ルドガー、心配なのはわかるが、少し落ち着くんだ。彼女のほうがしっかりしてるぞ」
「……分かっている。でも信じていいのか、先生……もし状況が悪化したら、俺はいくらあなたでも……」
信頼する相手に対し、ルドガーはぎろりと獣の目で睨みつける。
あなたはハラハラしたが、医術師は動じずに頷いた。
「ああ、君の気持ちは最もだ。だが信じていい。彼女は健康体なんだよ。もちろん症状はこれからも注意深く見守るが。対処療法の薬を持ってきたから、これを使ってくれ」
彼は鞄からいくつかの錠剤と軟膏を取り出し、あなたに渡した。
その細かな準備の様子から、本当に今の状況は、考えられる範囲だったのだと知る。
「ありがとうございます、フォロ先生。これで少しは楽になるかな」
「しばらく筋力を戻すのは難しいかもしれないが、だるさは減るはずだよ」
二人の落ち着いた会話を見ていて、ルドガーの興奮していた瞳がだんだんと消沈していった。