第2章 誕生日
_202号室
ベランダのサッシを閉めた男はふぅ、と強ばっていた肩を落としてローソファに深く腰かけた。
沈黙が流れる。
男は口元を僅かに緩ませて心の中で小さくガッツポーズをした。
(よし!…初めて話せた)
必要最低限の家具家電しかないどこか殺風景で生活感の感じさせない部屋で男はローソファに改めて座り直すと、テーブルに置かれているノートパソコンを開いた。
液晶の青白い光が男の顔を照らす。
その顔は誰もが知る、あの神童と呼ばれた格闘家、那須川天心だった。
マウスカーソルを動かす彼の指先は先程の201号室の女の子との会話で興奮した、初恋を拗らせた男子のように僅かに震えているが、その表情は先程まで心の中でガッツポーズしていた男とは思えないほど真剣でいて、その目は熱っぽくギラギラと輝いていた。