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201号室と202号室

第2章 誕生日



「…こんばんは」

そして少しの間を置いて。

「……あっ!ごめんごめん!…急に声かけて、びっくりしたよね」

_静まり返った深夜の街に響いたのは明るく、無邪気な、人懐っこい男の声だった。


「……え、…っと……こんばんは」


長らく空室だったはずの隣室の202号室。
誰か引っ越してきたんだ、と瞬時にそう理解する。

だが今の時代、隣人がパーテーション越しに声をかけてくるなど滅多にない状況になつは動揺し、蚊の鳴くような声で小さく挨拶を返した。


「隣、引っ越してきたんだよね!よろしく!」


深夜のベランダだというのにまるで転校生がやってきた教室での会話のように声を弾ませている男。


(な、なんだこの人…距離感バグってる……)

コミュ障で人見知りのなつは、パーテーションをじっと見つめることができず、どこか目線を彷徨わせながら立ち上がった。


「っあ……、そ、そうなんですね……、よろしくお願いします…」


ベランダのサッシを開けながら、そう伝えると足早に部屋に戻ろうとした。


「今日はもう遅いんで、また改めて挨拶に伺いますね!おやすみ〜!」


そう言い残した男は、なつよりひと足早く先に部屋に戻っていった。
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