【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第8章 【番外編】罪な男
それを見たラビは、完全に満足した顔で彼女の髪へ手を伸ばした。
「髪、スープに入っちまうぞ」
長い銀髪を一房だけ掬い、耳の後ろへそっと掛ける。
指先が頬に触れた瞬間、ティファの肩が小さく跳ねた。
「ラビ、本当に近いからっ……」
「嫌?」
「い、嫌じゃないけど……っ」
「じゃあいいじゃん」
「よくないの」
「なんで?」
「は、恥ずかしいから……っ!」
小さく零れたその一言に、ラビの片目がきらりと光った。
「ティファ、今すっげぇ可愛い」
「見ないで」
「無理」
少し離れた卓で、ジェリーは口へ運びかけたパンを止めていた。
ティファが赤くなって顔を背けると、ラビは楽しそうにそちらを覗き込む。
そのやり取りに、ジェリーは堪えきれないように小さく笑った。
「……あらあら」
パンをひと口かじり、ゆっくりと噛む。二人の声が聞こえるたびに目を上げながら、合間にスープを飲み、またパンをちぎった。
ラビは笑って、ティファの皿に乗っていた小さな焼き菓子へ視線を落とした。
「これ、一口くんねぇ?」
「はい」
ティファは焼き菓子をラビへ差し出した。
けれど、ラビが掴んだのは菓子ではなく、それを持つティファの手だった。
「え?」
手ごと口元へ引き寄せられたかと思うと、ラビが少し身を屈め、指先からぱくりと食べた。
ティファは目を瞬かせ、それから一気に顔を赤くした。
「ラビ!」
「ん。甘いなコレ」
「手で受け取ってよ……っ!」
ラビは掴んでいた手を離し、悪びれもせず笑う。