【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第8章 【番外編】罪な男
それから、何事もなかったようにスプーンを取る。
小さく息を吐いて、ティファもスープへ視線を戻した。
そのまま、しばらくスプーンで掻き混ぜていた。
「それ、食べねぇの? さっきから全然減ってねぇじゃん」
「少し熱いんだもの」
「じゃ、冷ましてやるさ」
「え?」
ティファが止めるより早く、ラビは彼女のスプーンを取った。
スープをひとさじ掬い、ふう、と軽く息を吹きかける。
それから、当然のようにティファの口元へ差し出した。
「ほら」
ティファの頬が、みるみる赤くなる。
「じ、自分で食べられるから……っ」
「たまにはいーだろ?」
「ここ、食堂よ」
「それが何さ」
「人が見てるわ」
「見せときゃいーだろ」
「よ、よくないってば……っ」
ティファは小さな声で抗議したが、ラビはスプーンを下げない。
むしろ、片目を細めて楽しそうに彼女を見つめている。
「ティファ、冷めんぞ」
「じ、自分で食べるから……」
「ダーメ。はい、あーん」
「ラビ」
「食べるまで下げねぇさ」
「……っ」
しばらく睨み合った末、ティファは観念したように小さく口を開けた。
ラビの顔が、分かりやすく緩む。
「ん。えらい」
「こ、子供扱いしないで……っ」
「可愛かったから、つい」
「……っ」
ティファは返す言葉を失い、赤くなった顔を隠すように俯いた。