【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第8章 【番外編】罪な男
昼食の時間を大きく過ぎた食堂は、人もまばらになっていた。
残っているのは、遅い任務明けの団員が数組と、隅の卓を囲むファインダー達くらいのものだ。
配膳口の列もすっかり途切れ、ジェリーも厨房に近い卓へ自分の盆を運んできた。ようやく取れた遅い昼食に肩の力を抜き、パンをちぎりながら温かなスープを口へ運ぶ。
その中で、一角だけが妙に甘い空気に包まれていた。
数人のファインダー達が、フォークを握ったまま、その一点を凝視している。
視線の先には、並んで座るラビとティファがいた。
その日、ティファは私服だった。
襟元の開いた、柔らかな生地のブラウス。いつもの団服ならきっちり隠れている鎖骨や首元が、今日は少しだけ無防備に覗いている。
着慣れた団服より、ずっと軽い。
食堂へ入った時から、視線が集まっていた。
ティファは気づいていない。
――隣を歩くラビの足が、半歩だけ遅れたことにも。
ティファは湯気の立つスープへ、スプーンを入れながら隣に座るラビへ困ったような視線を向けた。
「……ラビ」
「ん?」
「席、近くない?」
「そーか?」
ラビは何でもない顔で返した。
けれど、彼の肩はほとんどティファの肩に触れている。
というより、完全に触れていた。
「向かいにも席は空いているわよ」
「向かいだと遠いじゃん」
「食事をする距離としては、向かいが普通でしょ」
「オレの普通はこっちさ」
悪びれもなく言って、ラビは自分の上着へ手を掛けた。
そのまま、ティファの方へ差し出す。
「これ、着とけ」
「え?」
「いいから」
ティファは差し出された上着と、ラビの顔を見比べた。
「食堂、暑いくらいよ?」
「……じゃあ、いいさ」
ラビは上着を椅子の背へ掛けた。
畳みもせず、すぐ取れる位置に。