【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第8章 【番外編】罪な男
その時、卓の横で足音が止まった。
「ジェリー、ごっそーさん」
食器を返しに来たラビだった。ファインダー達の背筋が、一斉に伸びる。
「この前の飲み物、また頼むわ」
「蜂蜜を入れたやつ?」
「そ。あいつ、飲みやすかったって喜んでたからさ」
「はいはい。必要な時に言いなさい」
「ん。あんがと」
ラビは片手を上げて、食堂を出て行った。
扉が閉まる。
長い沈黙の後、一人が呟いた。
「……今の、聞いたか」
「……やばい、知れば知るほどラビを好きになってきたっ!」
「なんて罪作りな男なんだ……!」
ファインダーの一人が、頭を抱えた。
敵わない。どうやったって、敵うわけがない。
けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。
あれだけの気づかいを見せられて、妬む気力すら残っていない。
やがて、一人が顔を上げた。
何かを吹っ切った目で、ジョッキを持ち上げる。
「……ラビに」
一拍あって、隣の男がジョッキを取った。
「……ラビに」
「ラビに」
次々と、ジョッキが持ち上がっていく。
「「「乾杯!」」」
ぶつかり合ったジョッキから、少しだけ泡がこぼれた。
気の抜けかけたビールが、その夜いちばん美味かった。