【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第8章 【番外編】罪な男
ジェリーは指を一本立てた。
「あの男、スプーンを拾ったあと、反対側へ座り直したでしょ」
「……そういえば」
「そのあと、アンタたちの席からティファはよく見えた?」
ファインダー達が顔を見合わせた。
「……ラビが邪魔で」
「そういうことよ。座る角度まで考えてるの」
「……か、角度まで?」
「や……やっぱり、威嚇じゃないか!」
「そうよ」
ジェリーはあっさり頷いた。
「で、アンタたちは? 誰かのために、そこまで考えたことあるの?」
誰も、答えられなかった。
「ついでに言うとね。ラビ、いつもはあそこまでしないのよ」
「……え?」
「あーんだの、指から食べるだの。今日はずいぶん念入りだったわね」
「なんで今日は、そんな……」
言いかけて、一人が止まった。
今日の、彼女の私服。食堂の、あの視線。
「……俺たちに、見せてたのか」
ジェリーは、答えなかった。
答えないことが、答えだった。
「まぁ……ここまで話したなら、全部言ってしまおうかしら……」
ジェリーは声を少し落とした。
「アンタたちが見てない時も、ちゃんとティファのこと気にしてるのよ……」
「……えっ?」
「ティファの声よ。この前、任務から帰ってきた時、少し掠れてたでしょ」
ファインダー達は顔を見合わせた。覚えている者はいなかった。
「ラビが厨房に来たのよ。『あいつ、声掠れてたから。何か飲みやすいやつ、出してやって』って」
「……」
「蜂蜜を入れた温かい飲み物を出してあげたわ。熱すぎないようにして、あの子に渡したの」
ジェリーは頬杖をついて、小さく笑った。
「元気のない日には、『何か甘いの、一個つけてやって』とか。いつもじゃないの。そういう日に、ふらっと来るのよ」