第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
リナリーの表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「うん。必ず、戻ってきてね」
区画の入口から、軽い口笛が聞こえた。
「おっ、似合ってんじゃん」
聞き覚えのある声に、私は振り返る。ラビが、片手に本を抱えたまま柱へ肩を預けて立っていた。
軽い足取りで、こちらへ近付いてくる。
「黒って、こんな綺麗に見えるもんだったんだな。……ジョニー、かなりいい仕事したさ」
「ありがとう。ティファも、動きやすいって言ってくれたんだ」
ジョニーが嬉しそうに答える。
ラビは私の前で立ち止まる。
初対面の時と同じように、躊躇なく距離へ入り込んでくる。翠の瞳がゆっくりと私の姿を追っていく。
高い襟。銀の肩当て。腰のベルト。長い裾の開き方。
そして、二振りのレイピアが顕現するはずの両手へ。
「……これで、あの光の剣を出して戦うんだな」
「ええ。ジョニーが、そのために動きやすく作ってくれたの」
「そっか」
ラビは小さく頷き、すぐに人懐こく笑った。
「じゃあさ、初任務の相棒はオレにしねぇ?」
ラビは、私の両手へ落としていた視線を持ち上げる。
「慣れない本部で、いきなり知らねぇ奴と組むより安心だろ? オレなら道にも詳しいし、危なくなったらちゃんと守ってやるさ」
「随分、自信があるのね」
「そりゃあ、ティファに格好悪いところ見せるわけにはいかねぇからな」
リナリーが、くすくすと笑う。
「ラビ、ティファの任務は兄さんが決めるんだから、勝手に相棒を名乗らないの」
「希望くらい出してもいいだろ?」
「その希望が不純なのよ」
「美人と任務に行きたいのは、健全な希望さ」
軽口を叩きながら笑うラビ。