第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
「……あれが、ティファのイノセンスなんだな」
「ええ」
「声で出して、声で形を保ってる?」
その問いに、私はわずかに目を細めた。
――軽口の間へ挟まれたにしては、あまりに核心へ近い。
「どうして、そう思うの?」
「見てりゃ分かるさ」
ラビは軽く肩を竦める。
「刃がぶつかるたび、ティファの呼吸が変わってた。声を響かせてるわけじゃねぇのに、ずっと何かを繋いでるみてぇだったから」
「……よく見ているのね」
「そりゃ、興味ある相手のことは見るだろ?」
ラビはさらりと答える。
そして、まるで今までの鋭い観察などなかったかのように、ふっと笑みを深めた。
「それに、女の子の戦い方なら、なおさら見逃せねぇさ」
私はもう、あの二つの音を気のせいだとは思えなかった。
「……そう」
短く返すと、ラビの笑みが一瞬だけ固まった。
ぱん、とリナリーが手を叩く。
「はい、今日はここまで! ティファは昨日着いたばかりなんだから、疲れさせすぎちゃ駄目よ」
「賛成。腹減った」
「あなたは見ていただけでしょう?」
「見るのも結構体力使うんさ」
「嘘ばっかり」
リナリーの呆れた声に、ラビが笑う。
そのやり取りを聞きながら、私はもう一度、自分の手元を見つめた。
指先には、まだ戦いの余韻が残っていた。
この教団での日々は、きっと穏やかなだけでは済まない。
そんな予感が、静かに根を下ろしていた。