第4章 【第三話】檻と家のはじまり
その横で、黒髪の青年が苛立たしそうに舌打ちをした。
「朝から騒ぐな、馬鹿ウサギ」
「相変わらず冷てぇなぁ、ユウは」
青年の箸が、ぴたりと止まる。
「……その名で呼ぶなと言っただろうが」
その声を聞いて、昨日、鍛錬場で覚えた違和感がほんの一瞬だけ蘇った。
私は無意識に背筋を伸ばす。
「ティファ、こいつ神田ユウ。態度は最悪だけど、腕は確かさ」
ラビがひらひらと手を振りながら紹介する。
「殺すぞ、馬鹿ウサギ」
リナリーが困ったように溜息を吐いた。
「もう、朝から喧嘩しないの」
私は小さく頷き、青年へ向き直った。
「初めまして。ティファ・ロキルです。これから、よろしくお願いします」
神田は一瞬だけ、こちらを見た。
暗く、鋭い瞳。
視線がぶつかっただけで、空気が張り詰める。
「……馴れ合う気はねぇ」
吐き捨てるような声だった。
「そう」
私が素直に頷くと、神田の眉がわずかに動いた。
「でも、任務で一緒になることはあるでしょう。その時は、足手纏いにならないようにするわ」