第4章 【第三話】檻と家のはじまり
神田は数秒、無言で私を見ていた。
怯えるでも、怒るでもなく、ただ言葉を返した私を測るように。
やがて、小さく舌打ちする。
「……勝手にしろ」
それだけ言うと、神田は食事へ視線を戻した。
向かいで、ラビが妙な顔をして私を見ている。
「……ティファ、すげぇな」
「何が?」
「ユウに睨まれて、そのまま普通に会話続ける奴、あんまりいねぇさ」
「挨拶をしただけでしょ?」
首を傾げると、ラビは数秒ぽかんとした。それから、堪えきれないように吹き出す。
「ははっ……やっぱ面白ぇな、ティファ」
昨日から何度も聞いた、軽やかな笑い声。
――音が、重なった。
思わずラビを見る。彼はまだ楽しそうに笑っていた。
昨日はひどく遠く感じた人が、ほんの少しだけ近く見えた。
「……何さ?」
視線に気付いたラビが、笑いながら首を傾げる。
私は小さく首を横へ振った。
「いいえ。何でもないわ」
「ふーん?」
ラビは面白そうに目を細めたけれど、それ以上は聞いてこなかった。