第2章 【第一話】雪に残る歌
「なに……?」
自分の身に何が起きているのか、分からなかった。淡い光が、灰へ崩れかけた母の身体を柔らかく包み込む。
黒くなった身体は、もう戻らない。
母の中から、ほんの小さな輝きが浮かび上がった。
何かが、そっと持ち上げられていく。
「お母さん……?」
それが母の魂なのだと、なぜか分かった。
――行かなければならない。ここではない場所へ。誰にも捕まらない場所へ。
そんな感覚が歌の奥から流れ込んでくる。
白銀の光は、鋭く、眩しく、逃げ場を与えず、異形そのものを壊していく力だった。
「ああああああああッ!!」
絶叫が雪原へ響き渡る。歪んだ笑みが崩れ、黒い身体へ白い亀裂が走った。一つ、二つ、やがて全身へ。
異形の悲鳴の奥から、別の声が聞こえた。
『たすけて……』
幼い声だった。
泣きながら、震えながら、助けを求める誰かの声。
「誰……?」
歌が、一瞬途切れそうになった。
母を殺した異形の中に、誰かがいる。
『いたい……こわい……』
声が胸へ流れ込んでくる。
まるで、自分まで引き裂かれているようだった。
涙が溢れる。
「ごめんなさい……」
誰に謝っているのか、自分でも分からなかった。
「でも……もう、お母さんを……苦しめないで……!」
叫びは、そのまま歌へ変わった。