• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌



耳障りな笑い声が頭上から降ってくる。顔を上げると、母を殺した異形がこちらを見下ろしていた。

……何がそんなに楽しいの。
お母さんがこんなふうになっているのに……っ。


腕の中から、さらさらと灰が零れていく。異形が一歩、こちらへ踏み出した。

……っ! 次は、私だ。

逃げなければいけないのに、動けなかった。母の身体から手を離すことなど、できるはずがない。


「来ないで……」

異形が、雪を踏み砕く。


「来ないで……!」

振り上げられた腕。母を貫いたものと同じ、黒く禍々しい刃。

それが今度は、私へ向かって振り下ろされる。



その瞬間だった。喉の奥が、焼けるように熱を帯びた。


「っ……!」

息が詰まる。
胸の奥から、何かが激しくせり上がってくる。


痛い。苦しい。消えてしまう母を繋ぎ止めたい。

その願いが、喉の奥で弾けた。



知らないはずの旋律が、唇から溢れ出す。

澄んだ音が、雪の降る世界へ響いた。



幼い頃から、母が聞かせてくれた子守唄に似ていた。
けれど、それよりもずっと深く、遠く、悲しい歌。


祈りのようで。

同時に、すべてを切り裂く刃のような旋律だった。



私の中から、二つの光が溢れ出した。

一つは、腕の中から消えようとしている母へ向かう、淡く柔らかな光。

もう一つは、目の前の異形へ襲いかかる、鋭い白銀の閃光。

/ 368ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp