第4章 【第三話】檻と家のはじまり
冷たいわけでも、悲しいわけでもない。ただ、どこかがおかしかった。
そう思った瞬間。
青年の刀が、ぴたりと止まった。
暗い瞳が、真っ直ぐこちらへ向いた。
息が詰まる。
新入りを歓迎する温度など、そこにはなかった。
ただ、鍛錬を邪魔されたことへの苛立ちと、見知らぬ人間への冷たい警戒だけがある。
視線が絡んだ瞬間、彼の眉がわずかに寄った。
私が動揺を隠しきれていなかったせいかもしれない。
それとも、私が見つめすぎていたからか。
青年は何も言わず、すぐに興味を失ったように視線を外す。
再び刀が振るわれ、鋭い風切り音が鍛錬場へ響いた。
「……ティファ?」
リナリーの声に、私ははっと我に返る。
「え? ……ごめんなさい」
「どうかした?」
私は一瞬だけ迷った。
けれど、自分でも説明できない違和感を口にすることはできなかった。
「……ううん。すごい剣捌きだと思って」
「そうね。神田は本当に強いわ」
リナリーは素直に頷く。
ラビは、そんな私をちらりと見た。
先ほどまでの軽い笑みを浮かべたまま、何も言わない。
その目は、私の答えをそのまま信じてはいないように見えた。
私は、わずかに落ち着かなくなった。
もう一度だけ鍛錬場の奥へ視線を向け、それからリナリーに促されるまま、その場を後にした。