第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
何も、返せなかった。
アレンが、固く目を瞑る。それから、ゆっくりとこちらを見た。
「ティファが、自分で選んだなら」
少しだけ、声が掠れていた。続きを飲み込むみたいに、一度だけ唇を結ぶ。
「……ちゃんと、笑っていてください」
微笑んだ。
優しくて、泣きたくなるくらい綺麗な笑顔だった。
私は耐え切れず、目を伏せる。
アレンが、もう一度ドライヤーを手に取った。
「前を向いててください……。まだ、乾いてないので」
戸惑いながら鏡に向き直ると、温かい風が、また髪を揺らし始めた。
鏡の中のアレンは、いつもと同じ丁寧さで、髪を梳いていた。
「はい、終わりました」
ドライヤーを置いて、アレンが一歩下がる。
「治るまでって約束でしたけど……今日で、最後にしますね」
「アレン……」
扉の前で、アレンが一度だけ振り返った。
「泣かされたら、ちゃんと言ってくださいね」
真顔だった。
「ラビでも、容赦しませんから」
思わず、小さく吹き出してしまう。
「……うん」
「じゃあ、おやすみなさい」
扉が閉まる。
鏡の中には、乾いた銀髪の私だけが残っていた。
肩にストールを羽織って、部屋を出る。
向かう先は、もう決まっていた。