第4章 【第三話】檻と家のはじまり
教団の奥へ近付くほど、空気は静かになっていった。科学班の喧騒も、団員たちの足音も、少しずつ遠ざかっていく。
長く続く石造りの廊下を歩きながら、私は無意識に手首へ指を添えた。
そこには、母の銀の髪紐が結ばれている。
「緊張しているかい?」
隣を歩くコムイさんが、穏やかに尋ねた。
「……少し」
「そうだろうね。ヘブラスカは、僕たち黒の教団にとって、とても大切な存在だ。けど、初めて会う人にとっては……まあ、少し驚く姿かもしれない」
「コムイさんも、いつも立ち会うのですか?」
「基本はね。特に、君のように詳細がほとんど分からない適合者の場合は、僕も確認しておかなければいけないから」
その言葉に、胸がわずかに強張る。
やがて、重厚な扉の前へ辿り着く。
コムイさんが足を止め、私へ静かに視線を向けた。
「大丈夫。何が分かっても、君一人に抱え込ませるつもりはないよ」
その一言に、少しだけ息がしやすくなった。
「……はい」
扉が、ゆっくりと開く。
その向こうには、天井の高い石造りの広間が広がっていた。