第4章 【第三話】檻と家のはじまり
師匠と旅をしていた頃は、明日にはどの街にいるのかさえ分からなかった。アレンと過ごした日々も、いつも移動と修練の合間にあった。
本当に、私もここへ帰ってきていいのだろうか。
「……ありがとうございます」
どうにか、そう答えた。
その時、少し離れた机の向こうから、疲労の滲んだ声が飛んでくる。
「室長。歓迎は結構ですが、こっちの決裁書類もそろそろ見てください……」
振り向くと、目の下に濃い隈を作った男性が、書類の束を抱えて立っていた。
「あ、ティファ。こちらはリーバー班長よ。科学班をまとめている、とても頼りになる人なの」
リナリーが紹介してくれる。
リーバー班長は疲れた表情のまま、丁寧に頭を下げた。
「リーバー・ウェンハムだ。装備や任務で困ったことがあれば、遠慮なく言ってくれ」
「よろしくお願いします、リーバー班長」
「室長よりは話が通じるから、安心していいぞ」
「リーバー君!?」
コムイさんが大袈裟に胸を押さえる。
すると、奥の机で作業をしていた眼鏡の青年が、思わず吹き出した。
「班長、また室長に厳しいなぁ」
「ジョニーまで笑うの!?」
「だって、否定できないじゃないっすか」
「ティファ、あちらがジョニーよ」
リナリーが、楽しそうに彼へ手を向ける。