第4章 【第三話】檻と家のはじまり
「それだけで納得される師匠も、どうかと思うわ……」
思わず零すと、背後でラビが噴き出した。
「ははっ、本人が言うなら間違いねぇさ。クロス元帥の弟子ってだけで、ティファが逞しい理由は大体分かるな」
「聞こえているわよ、ラビ」
「褒めてんだよ」
本当に褒めているのかは分からなかった。
コムイさんは軽く咳払いをすると、改めて私へ向き直る。先ほどまでの明るさを残しながらも、その眼差しには、室長としての静かな慎重さが戻っていた。
「君のイノセンスについては、このあと正式な確認をさせてもらうことになる。元帥の手紙には、喉に宿る寄生型だとしか書いていなかったからね」
無意識に、指先が喉元へ触れた。
「はい。『ニルヴァーナ』と呼んでいます」
「ニルヴァーナ……」
コムイさんは、その名を確かめるように小さく繰り返した。
「詳細は、まずヘブラスカの確認を受けてからにしよう。到着したばかりの君へ、いきなり質問責めをするのも酷だからね」
その声音が、少しだけ柔らかくなる。
「ようこそ、黒の教団へ。ティファちゃん。ここは戦うための場所だけれど、同時に、君が帰ってきていい場所でもある」
胸の奥が、わずかに詰まった。
――帰ってきていい場所。