第4章 【第三話】檻と家のはじまり
「ストライク……! 大大大ストライクさぁ!」
「……え?」
あまりに勢いのある声に、反応が遅れた。
少年は一気に距離を詰めると、私の右手を両手で包み込んだ。
「オレ、ラビ! あんた、今日来た新人さん? それとも、迷い込んできた天使さん? ねぇ、名前教えてよ」
淀みなく言葉が溢れてくる。
握られた手を引く間もなく、ラビと名乗った少年は満面の笑みで顔を覗き込んできた。
「いやぁ、びっくりした。新入りが来るって話は聞いてたけど、こんな綺麗な子だとは思わなかったさ」
「……あの」
明るい。
驚くほど人懐こく、距離が近い。
軽口も、笑い方も、こちらを覗き込む仕草さえ妙に自然だった。
普通なら、あまりの勢いに戸惑うだけで終わっていたと思う。
握られた指先の奥で、何かが小さく鳴った。
――音が、重ならない。
声や触れた手から、その人の感情が音のように伝わってくることがある。
表に響くのは、屈託のない少年の声。突然現れた女の子に浮かれ、楽しそうに笑っている音。
それは確かに本物の音で、そのすぐ奥に、ひどく静かで乾いた響きが沈んでいた。