第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編
「教団の犬か……いや、それすらも美しい! 君は、悲劇を壊したのではない!」
男は両手を広げる。
「新しい悲劇を生んだのだ! 死者へ誘われる者達が生へ引き戻され、再び絶望へ落ちる! なんと美しい……!」
その声に、胸の奥へ冷たい怒りが広がった。
「死に誘われる者の顔は美しい! 残された者が狂い、蘇りを願う姿はさらに美しい! その願いが、また次の悲劇を呼ぶ。これほど上質な“餌”が他にあるかね!?」
男が、血の滲んだ私の腕へ手を伸ばす。
「君も、もっと近くで見たくはないか? 人が愛ゆえに壊れていく瞬間を――」
触れられる。
そう思った次の瞬間。
――一閃。
支配人の足元の舞台床が、深く抉れた。
男の動きが止まる。
その目の前へ、六幻の切先が突き付けられていた。
「……触るな」
冷たい声。
神田だった。
彼は私の前へ立ったまま、振り返らない。
ただ、その背中だけで男を押さえ付けるような圧を放っていた。
支配人の顔が、初めて強張る。
「き、君は……」
「喋んな」
神田の声がさらに低くなる。
「次、こいつに手ぇ伸ばしたら斬る」
背中越しに落ちた言葉に、私は小さく息を呑んだ。