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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編



「では、準備を」

男は満足そうに笑い、スタッフへ声を掛ける。


私は静かに踵を返した。



舞台袖へ向かう途中。

柱の影へ、一瞬だけ視線を向ける。


そこには、腕を組んだ神田が立っていた。


険しい顔。

先ほどまで支配人が私を見ていた場所へ、射抜くような視線を向けている。


今すぐ斬り捨てたいとでも言うような顔だった。

けれど、彼は動かなかった。


私は小さく頷く。

神田の眉間の皺が、さらに深くなった。



幕間。

劇場を満たしていたざわめきが、ゆっくり静まっていく。


赤い幕が開き、眩い光が舞台中央へ落ちた。


私は一人、その光の中へ歩み出る。


深紅のドレスの裾が、舞台床を静かに滑った。

観客席から、小さなどよめきが上がる。


誰だ。
新しい歌姫か。

そんな囁きが、幾重にも重なっていく。


私は舞台中央で足を止めた。


視線を伏せる。

そして。

歌が、静かに零れた。


最初の一音が、空間へ落ちる。


その瞬間。
劇場を満たしていた熱が、僅かに揺らいだ。


ざわめきが止まる。


観客達が、息を呑む。


私の声が、劇場の隅々へ染み渡っていく。


けれど同時に。
喉の奥へ、黒い糸が絡み付くような感覚が走った。


――いる。

この舞台の奥に。


歌へ引き寄せられるように、何かが蠢いている。

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