第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
胸元へ触れた指先に、力が籠もる。
「生きているのに、どこか遠い場所の気配が混じっているような……そんな違和感があるの」
神田は何も言わない。
薄暗い個室へ、汽車の揺れる音だけが響いている。
「それに、神田って……昔から、生きることに執着が薄いでしょう」
沈黙。
「任務でも、怪我をしても、自分が壊れることを全然怖がっていない」
神田の視線が、鋭くこちらへ向く。
それでも私は、言葉を止められなかった。
「まるで……自分が壊れることを、最初から数に入れていないみたい」
空気が、一瞬で冷えた。
踏み込み過ぎた。
そう分かった時には、もう遅かった。
長い静寂。
神田はしばらく私を見ていた。
その表情からは、何も読み取れない。
けれど、膝の上へ置かれた拳が、僅かに握られたのが見えた。
やがて。
「……くだらねぇ」
吐き捨てるみたいな響き。
「勝手に人の中まで覗いた気になってんじゃねぇ」