第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
すると、隣で神田が舌打ちした。
「いつまでやってやがる。汽車が出るぞ」
「ユウはもうちょい、恋人同士の別れ際くらい気ぃ遣えねぇの?」
「知らねぇ。置いてくぞ」
吐き捨てるように言い、神田は先に歩き出す。
私は首を傾げかけたけれど、すぐにラビの声へ引き戻される。
「……ティファ」
顔を上げる。
ラビは、引き止めたいのを堪えるような目で私を見ていた。
「ちゃんと帰って来いよ」
胸が、きゅっと締め付けられる。
私は小さく頷いた。
「ええ。帰ってくる」
その言葉に、ラビの表情が僅かに緩んだ。
そして。
誰にも見えないように、私の指先へほんの一瞬だけ触れる。
すぐに離れてしまう熱。
けれど、それだけで十分だった。
「……行ってくる」
「ん。行ってらっしゃい」
その声音が、思ったよりずっと優しかった。
私はその熱を胸へ抱えたまま、神田とトマと共に、任務地パリへ向かう汽車へ乗り込んだ。