第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
「神田くん、今回は潜入任務なんだよ。支配人だけ捕らえても、舞台に仕込まれた能力や支援者の繋がりを押さえられなければ、同じことが繰り返される」
「知るか」
吐き捨てる声音。
けれど、神田の視線は資料ではなく、私の方へ一瞬だけ向けられていた。
私は小さく息を吐く。
「神田」
「……あ?」
「私の護衛、任せてもいい?」
静かに聞くと、神田の眉間へさらに皺が寄る。
数秒の沈黙。
やがて。
「……勝手にしろ」
ぶっきらぼうな返事。
けれど、それは承諾と同じだった。
コムイさんが安堵したように息を吐く。
「よかったよかった。君達なら連携面は問題ないからね。トマには裏方として動いてもらう」
「劇場関係者の名簿、支援者の情報、観客の避難経路の確認。それから現地のファインダー達と合流して、非常時の確保と誘導を頼むよ」
「承知しました」
トマが静かに頷いた。
「それと、潜入には相応の衣装が必要になる」
コムイさんはそう言いながら、机の下から細長い箱を取り出した。
嫌な予感がした。
差し出された箱を開ける。
そこに収められていたのは、深紅のシルクドレスだった。