第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
静かな執務室へ、紙をめくる音だけが響く。
私は資料へ視線を落とした。
豪華な劇場。
華やかな照明。
熱狂する観客。
けれど、その奥にあるものは、ひどく冷たい。
「……死者との再会を、見世物にしているのね」
掠れた声が、自然と漏れた。
「冒涜的だわ」
魂を安らぎへ導くための歌。
死者は、戻ってくるために眠るのではない。
残された者を死へ誘うために、想われるのでもない。
――止めなければならない。
そんな私を見ながら、コムイさんが静かに頷く。
「そこで、ティファちゃん。今回、君には劇場へ潜入してもらう」
「潜入?」
「支配人は、新しい歌姫を探しているらしい。数日前、劇場へ売り込みに来ていた歌手が突然失踪した。どうやら支配人は、舞台の“死”をより美しく彩れる声を欲しがっているようだ」
コムイさんは一度言葉を切った。
「君の歌声なら、十分に餌になる」
私は静かに息を呑む。
その瞬間。
ガン、と荒い音が響いた。
神田だった。
六幻の鞘尻を、苛立ったように床へ鳴らしている。
「……ちっ。くだらねぇ」
「そんな面倒な真似しなくても、支配人ごと斬れば済む話だろ」