第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
滑らかな生地が、窓からの光を妖しく反射している。喉元は、黒い刺繍の入った細いハイネックで覆われている。
けれど、そこから胸元へ向かって雫型に肌を覗かせる意匠になっており、腰の線へ沿う柔らかな布が、舞台へ立つ歌姫らしい華やかさを作っていた。
私は小さく目を見開く。
「……派手ね」
「潜入には必要だからねぇ」
コムイさんが、少し気まずそうに笑う。
神田の視線が、一瞬だけ箱の中へ落ちた。
次の瞬間、露骨に顔をしかめる。
「悪趣味だな」
「僕の趣味じゃないよ!?」
コムイさんが慌てて両手を振った、その時だった。
こんこん、と扉が鳴る。
返事をするより先に、扉が僅かに開いた。
「ティファ、いる? リナリーが薬の替え持ってけって――」
聞き慣れた声。
どくん、と胸が反射的に跳ねる。
振り返る。
扉の隙間から顔を出したラビが、私を見つけてふっと笑った。
その手には、小さな包みが握られている。
「ラビ」
名前を呼んだ瞬間。
自分でも分かるくらい、声が柔らかくなった。