第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
「……師匠から聞いたの?」
私が尋ねると、アレンは小さく頷いた。
「昨日の夜に。ティファは、先に本部へ行くことになったって」
「そう」
「……どうして、ティファだけなんですか」
声が、少しだけ硬かった。
私は思わずアレンを見る。
彼は俯いていた。
白い前髪が目元へ落ち、表情ははっきりとは見えない。
指先が、扉の前にいた時よりずっと強く握り締められていた。
「私のイノセンスが、少し特殊だからだと思う」
できるだけ静かに答える。
「ニルヴァーナのこと。セトラのこと。教団で正式に調べてもらう必要があるって、師匠が」
「……調べる」
アレンが、その言葉を繰り返した。
「そんな怖い顔しなくて大丈夫よ」
私は小さく笑おうとする。
「私だってエクソシストになるために行くんだもの。閉じ込められに行くわけじゃないわ」
「……本当に、そうですか」
「アレン?」
「ティファの力を知った人たちが、ティファをどう見るのか……僕には分からない」
「亡くなった人の魂を送って、伯爵の手に渡る前に救うことができる力なんて……きっと、誰も放っておきません」
息が、少しだけ浅くなった。師匠の声が、遠い記憶の奥から蘇る。
――そうやって他人の痛みまで拾ってると……いつか、その力がお前を食い潰すぞ。
あの時は分からなかった言葉が、今のアレンの瞳を見ていると、その意味の輪郭へ少しだけ触れた気がした。
私は無意識に、喉元へ手を添えた。