第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
「誰を?」
尋ねると、アレンは一瞬だけ息を止めた。視線が一度、横へ逸れる。
「……大切な人を」
「そう」
あの夜、雨の窓辺で泣いていた子が、と思った。
「アレンにも、そういう人ができたのね」
アレンの肩が、跳ねた。
「……え?」
「よかった。じゃあ、その人のためにも頑張らないとね」
「いや、あの、そういうことじゃなくて……」
「違うの?」
「違わない、ですけど……」
アレンは何か言いかけて、結局、口を閉じた。そのまま、顔ごとそっぽを向く。
私は、ほんの少しだけ微笑んだ。
「じゃあ、明日から訓練を増やすわ」
アレンの表情が、ぴたりと固まる。
「……なんでそうなるんですか」
「守れるようになりたいんでしょう?」
「そ、それはそうですけど……」
「師匠には私から言っておく」
「待って、ティファ。師匠まで加わったら、僕、本当に死にます!」
慌てて追い縋ってくる声に、私は思わず小さく笑った。
その笑い声へ、アレンが一瞬だけ目を見開く。やがて彼も、困ったように笑った。
夜の道を、二人で歩いていく。
前は、アレンの少し後ろを歩いていた。手を伸ばせば届く距離で。
今は、隣から足音が聞こえる。