第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
私はアレンを見た。
「アレン」
「はい」
「イノセンスは、あなたの罪を証明するためにあるんじゃない」
アレンの表情が、わずかに揺れる。
「敵を討つためだけでもない。……誰かを守りたいと思うなら、そのために使えばいい」
「……守るために」
小さく繰り返す声。
私は一歩、間合いを詰めた。
「でも、優しいだけじゃ守れない」
アレンが私を見る。
「迷っている間に、奪われることもある。願うだけでは届かないこともある。だから、あなたは強くならなきゃいけない」
母を失った雪の日が、脳裏を過った。
あの時の私は、歌に宿る力も、戦うことも、救うことの痛みも知らなかった。
けれど、今は違う。
だからこそ、アレンにも生き残ってほしかった。
誰かを救おうとして、彼自身が失われてしまわないように。
「……うん」
アレンは、静かに頷く。
「じゃあ、もう一度」
「お願いします」
私は息を吸い、短い旋律を紡いだ。両手に白銀の刃が戻り、アレンも左腕を構え直す。
刃が交わる。
砂埃の舞う熱い空気の中で、アレンは何度も倒れ、何度も立ち上がった。