第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
私自身も、歌だけで戦場を生き抜けるわけではなかった。
「歌ってる間も、身を守れなきゃ話にならねぇ」
そう言って師匠が次に課したのは、ニルヴァーナの光を剣の形に保ち、自分の手で振るう訓練だった。
初めは、うまく形にすらならなかった。
喉の奥に集めた光は、両手へ届く前に霧散する。ようやく一本の細い刃を作れても、握った途端に輪郭が崩れた。
「遅ぇ。そんなんで敵が待ってくれると思うな」
師匠の言葉は、容赦がない。何度失敗しても、休ませてはくれなかった。
一本を形として保てるようになれば、次は二本。
両手へ同時に顕現させれば、今度は足運びと呼吸を崩さずに振るえと言われる。
旋律を途切れさせたままでは、刃を保てない。呼吸を乱せば、光は揺らぐ。
だから私は、喉の奥で旋律を繋ぎながら、何度も何度も白銀の刃を生み出し続けた。
やがて、光は二振りの細身の剣――レイピアの形を取るようになった。
軽く、鋭く、私の動きに応じてしなる白銀の刃。
母を失ったあの日に溢れた光は、いつしか私が戦うための形を得ていた。
「……アレン、呼吸を整えて」
砂塵の舞う鍛錬場で、私は短く声をかけた。