第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
「銀髪の……あの女だけは、生かしておけぬ……ッ!」
クロウリーの咆哮が、古城の夜を震わせる。
血走った赤い瞳が、真っ直ぐに私を射抜いていた。
その憎悪は、私自身へ向けられているというより――誰かに植え付けられた恐怖のように思えた。
ふと。
尖塔の上に立つエリアーデと目が合った。
紅い瞳が、すっと細められる。
憎悪とは違う。
警戒。
いや――恐怖?
喉の奥で『ニルヴァーナ』が低く脈打った。
……私を、恐れている?
魂へ触れるこの力が。
彼女の隠している何かへ、辿り着くことを。
「ティファ、逃げて!」
アレンの鋭い警告が飛ぶ。
けれど、クロウリーの速度は、私達の予想を遥かに超えていた。
地面が砕ける。
爆発的な踏み込み。
紅い瞳が、真っ直ぐに私を捉える。
「――っ!」
咄嗟にレイピアを交差させる。
けれど、クロウリーは止まらなかった。
防御を弾き飛ばし、そのまま私の肩口へ牙を剥く。
避けきれない。
鋭い牙が、右肩を浅く抉った。
「っ……ぁ!」
焼けるような痛みが走る。
裂けた団服の下から、熱い血が滲み出した。
「ティファ!!」
アレンとラビの声が重なった。