第24章 【第二十三話】触れていい理由
階段をいくつか降りた先に、資材置き場の扉があった。中は薄暗く、天井近くまで棚がぎっしり並んでいる。空気が、ひんやりと埃っぽい。
「ランプは……確か、この辺だったかな」
棚の奥を探っていたラビが、すぐに一つ取り出した。
「ほら、あった」
「ありがとう、ラビ」
ランプを手に、扉の方へ向かう。
……後ろから、足音がついてこない。振り返ろうとした背中に、ふわりと腕が回った。
「ラビ……?」
「……このまま戻んの、もったいねぇじゃん」
肩口で、ラビが笑う気配がする。
「せっかく、二人っきりなんだしさ」
耳元で落とされた声が、くすぐったい。
「……少し、だけなら」
答えてしまってから、顔が上げられなくなる。
回された腕が、強くなった。
首筋に、ラビの長い溜め息がかかる。
「……オレ、全然抑え効いてねぇよな。お前見てると、つい触っちまう」
そのまま顔を埋めてきたラビが、ふと、動きを止めた。
「……ん?」
首筋のあたりで、すん、と息を吸う音がした。
「なんか、いー匂いする」
そのまま、髪に鼻先を押し付けられる。
「これ、どしたんさ」
「……リナリーに、香油分けてもらったの。今日、初めて付けてみたのよ」
「……ああ。あの朝、リナリーが髪いじってたの、そういうことか」
「……ちょっと髪の毛がボサボサで、気になっただけ」
ラビが、悪戯っぽくこちらを覗き込んでくる。
「ふーん。そのわりに、リナリー、オレとお前の顔見比べて『なるほどね』って笑ってたけど?」
……っ。
「へぇ……。そんなにオレのこと、意識してくれてんだー」
にやにやと緩んだ顔が、憎らしい。