第24章 【第二十三話】触れていい理由
食堂を出てからも、つい、手の甲を指でなぞってしまっていた。
……手を握られただけで、これなのに。こんな調子で、この先身が持つのかしら。
そんなことを考えながら歩いていたから、すぐ近くに来るまで気付かなかった。
窓辺に、アレンが立っていた。
外を眺めていた横顔が、こちらへ向く。
「……おはようございます、ティファ」
いつも通りの声だった。
緩んだままだった口元に気付いて、きゅっと唇を結ぶと、アレンの目がふっと和らいだ。
「……隠さなくていいですよ。ちゃんと、笑っててください」
結んでいた唇が、ゆっくりほどけていく。
それを見て、アレンも笑った。
「そうだ。約束、忘れないでくださいね」
「……え?」
「泣かされたら、ちゃんと言ってくださいってやつ」
アレンが、わざと真面目な顔を作ってみせる。あの夜と同じ顔に、つい笑ってしまう。
「……うん」
「ならいいんです。じゃあ、また」
最後にもう一度だけ笑って、アレンは窓辺を離れた。
遠ざかっていく背中は、一度も振り返らなかった。