第24章 【第二十三話】触れていい理由
「ラビ、記録のお仕事は終わったの?」
リナリーに聞かれて、ラビはコーヒーを啜りながら頷いた。
「おー。ま、オレにかかれば朝飯前さ」
……書庫では、死ぬ気で頭に叩き込むって言ってたけど。
「では、今日はゆっくり休めるのであるな」
「そのつもりさ」
ラビが欠伸を噛み殺す。目が合いそうになって、紅茶に視線を落とした。カップから離した手を、机の下に引っ込める。
向かいで、クロウリーが恐る恐る小籠包の二つ目に箸を伸ばしている。
「クロちゃん、それ、レンゲに乗せて先に皮破るんさ。じゃねぇと火傷すんぞ」
「な、なるほど……!」
机の下に引っ込めたばかりの手が、大きな手に包まれた。
……っ!
声が出そうになるのを、どうにか飲み込む。隣を見ると、ラビはクロウリーに笑いかけたままだった。
……別に、隠そうと決めたわけじゃない。
ただ、人前でこうして触れられるのは、まだ恥ずかしい。
「ラビ……っ」
小声で呼んでも、ラビは前を向いたままだった。
「ん?」
それきり、何も言わない。包まれた手を、きゅっと握られた。
……頬に集まってくる熱を、どうすることも出来ない。