第24章 【第二十三話】触れていい理由
「……ねぇ、リナリー。髪、どうやってお手入れしてるの?」
リナリーが、ぱちりと瞬きをした。
「お手入れ? ええと……椿の香油を、少しだけ付けてるかな。兄さんが、どこからか取り寄せてくれるの」
「室長とリナリーは、本当に仲が良いのであるな」
水のグラスを手にしたまま、クロウリーがしみじみと頷く。
「そうね……。兄さんの場合、ちょっと行きすぎてるけど」
リナリーが苦笑した。
「香油、か……」
思わず自分の髪先を摘むと、リナリーが不思議そうに首を傾げた。
「ティファがそういうこと聞くの、珍しいね」
「そ、そう?」
リナリーの視線が、私の顔で止まる。
「……それに、なんだか眠そう」
咄嗟に目元を押さえた。
「……はよー」
欠伸混じりの声が、すぐ後ろから降ってきた。
振り返る前に、隣の椅子が引かれる。
ラビは当たり前みたいに腰を下ろすと、コーヒーのカップを置いて、ぐっと伸びをした。
目の下に、私と同じ隈。
視線が合う。ラビは一瞬だけ目を瞬いて、それから、嬉しそうに笑った。
「……はよ、ティファ」
いつもと同じ挨拶だった。それだけで、昨夜の声が蘇ってしまう。
「……おはよう」