第24章 【第二十三話】触れていい理由
朝の食堂は、いつも通り賑やかだった。焼きたてのパンの匂いと、あちこちから上がる話し声。
入口で、つい中を見回してしまう。
……まだ、来ていない。
ほっとしたような、がっかりしたような気持ちのまま配膳口に向かい、紅茶とパンを受け取って、リナリーとクロウリーの向かいに座った。
「おはよう、ティファ」
「おはようである」
「二人とも、おはよう」
クロウリーの前で、蒸籠が湯気を立てていた。中には、ひだの寄った小さな包みが並んでいる。
「クロウリー、それは?」
「小籠包、というものである」
「私がおすすめしたの。ジェリーの小籠包、すごく美味しいんだよ」
リナリーが、少し得意げに笑う。
「せっかくなら、色々な国の料理を食べてみたくてな」
クロウリーは嬉しそうに一つ口に運び――ぴたりと固まった。
「……っ、あ、熱いのである……!」
「クロウリー、大丈夫!?」
水のグラスを差し出すと、リナリーも心配そうに身を乗り出した。クロウリーは一気に水を呷って、涙目のまま蒸籠を見下ろす。
「……ま、まだ五つも残っているのである……」
リナリーと顔を見合わせて、吹き出してしまう。
笑うたびに、リナリーの長い黒髪が肩でさらりと揺れた。朝の光を受けて、艶やかに光っている。
その髪から、なかなか目が離せない。
……私の髪は、あんなふうに光らない。