• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第3章 【第二話】次へ繋ぐ手



喉の奥で、ニルヴァーナが微かに脈動した。アレンの悲しみに呼応するように、淡い熱が集まってくる。

まるで、彼の痛みに触れようとするみたいに。


その瞬間だった。

「……笑えねぇな」

低い声が、廊下の奥から落ちた。


私は驚いて顔を上げる。

薄暗い廊下の向こうに、師匠が立っていた。


師匠の視線は、私の腕の中で泣くアレンと、微かに熱を帯びた私の喉元へ向けられていた。


「……師匠?」

「そうやって他人の痛みまで拾ってると……いつか、その力がお前を食い潰すぞ」


「……どういう意味?」

「分からねぇなら、それでいい」

師匠は苦々しそうに煙を吐いた。


「今はな」

そして、師匠は背を向けた。


「そいつが泣き止んだら、寝かせろ。明日は歩かせる」

「……こんな状態で?」

「だからこそだ」

師匠の足が、わずかに止まる。


「立ち止まったら、二度と戻れなくなる」

低く落ちた声は、誰に向けられたものだったのか分からない。


やがて足音が遠ざかり、廊下には再び雨の音とアレンの嗚咽だけが残された。

食い潰す、という師匠の言葉が、喉の奥へ小さな棘のように残った。


腕の中で、アレンが私の服を掴み直す。私はそっと抱き締める腕へ力を込めた。


今だけは。

この子を、一人にしたくない。

/ 392ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp