第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
「僕……マナに、もう……謝れない……」
その瞳が、大きく揺れる。
ずっと乾いたままだった瞳に、初めて透明な雫が滲んだ。
一粒。
頬を伝い、床へ落ちる。
まるで、失ってからずっと凍りついていた悲しみが、ようやく涙の形を取り戻したみたいだった。
「謝りたいのに……会いたいのに……!」
次々と涙が溢れ出す。
アレンは震える手で自分の胸元を押さえ、息を詰まらせた。
「僕が……僕が、マナを……!」
私は反射的に手を伸ばしかけた。触れたら、嫌がられるかもしれない。
ためらっていると、アレンの指が私の袖をぎゅっと掴んだ。顔を伏せたまま、離そうとしない。
私はゆっくり腕を回し、震える身体をそっと抱き寄せた。
「……うん」
他に、何も言えなかった。
許されるとも。忘れていいとも。もう苦しまなくていいとも、言えない。
「……会いたいよね」
その一言を口にした瞬間、アレンは私の胸元へ顔を押しつけ、声を上げて泣いた。
「マナ……! マナ……!」
何度も呼ぶ。
届かない名を。戻らない人を。
私はただ、その背中を撫で続けた。小さな拳が、私の服を強く掴む。
雨の音に混じって、アレンの泣き声が廊下へ響く。
「……ここにいるから」
私は震える背へ、そっと掌を添えた。
「一人で耐えなくていいの」