第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
夜、湯浴みを終えて部屋に戻ると、こんこん、と控えめなノックが響いた。
「ティファ、いますか?」
「ええ」
城から戻ったあとも、アレンは毎晩こうして髪を乾かしに来てくれる。
右腕は、もうだいぶ上がるようになった。
……今日が終わったら、もう自分で出来るって伝えなきゃ。
扉を開けると、手拭いを持ったアレンが、いつもと同じ顔で立っていた。
部屋に入ると、机の上のドライヤーを手に取って、鏡の前の椅子を引いてくれる。
促されるまま腰掛けると、背後に回ったアレンが、手拭い越しにそっと髪を包む。少しずつ水気を取ってから、ドライヤーの温かい風が、髪の間を抜けていった。
いつもと同じはずなのに、鏡の中のアレンを見られない。膝の上で、指を握り込んだ。
――僕は、ティファが。
書庫で途切れたままの声が、ふとした拍子に耳に戻ってくる。
「熱くないですか」
「……平気よ」
会話が、そこで途切れる。
前は、何でもない話で笑っていられた時間だった。
……今は、何を話せばいいのか分からない。
「雪、だいぶ積もりましたね」
「……そうね」
上の空のまま、相槌を打つ。