第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
「セトラの血は、人を救う。だが救いとは、時に人を縛る――与える側も、受け取る側もな」
寄っかかってた壁から、体を起こす。
「……はっきり言えよ」
「お前があの娘を特別に思うほど、あの娘もまた、お前を特別にする。それが救いになるとは限らん」
黙り込んだオレに、じじいは淡々と続ける。
「もしあの娘が、“皆を救うもの”として自分を差し出そうとした時――お前は記録者として見届けられるのか」
気付いたら、拳を握り込んでた。
「それとも、一人の男として引き戻すのか」
「……どっちにしたって、もう無かったことには出来ねぇよ」
「……そこまで言うならば、好きにしろ」
じじいは、もうこっちを見てなかった。
「ただし、ワシは認めん」
……分かってたけど、ちっと、堪えるな。
「情に溺れた者が、どう壊れていくか……ワシは嫌というほど見てきた。お前も、そうならん保証はない」
じじいがゆっくりと踵を返す。
「背負うと言った以上、最後まで背負え」
そのまま遠ざかっていく背中から、ぽつりと声が落ちた。
「……あの娘を、“聖女”にするな」
独り言みてぇな、小さな声だった。
振り返りもしねぇ。
「もし、あの娘が“誰のものでもなくなった”時――お前はきっと、後悔するぞ」
握ったままの拳に、力を込める。
「……じじい。そんな未来、絶対させねぇよ」
迷いが消えたわけじゃねぇ。
けど、もう……どっちからも目ぇ逸らすつもりはねぇんさ。