第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
呆れたようなリーバー班長の声を聞き流して、次のグラスへ手を伸ばす。その手首を、ラビの指が軽く止めた。
「……お前、怪我してんだろ。飲み過ぎんなよ」
その目に耐えられなくて、顔を背ける。
「ラビよりは飲めるもの」
ラビが、目を瞬く。
「……へぇ?」
「試してみる?」
「言ったな?」
そう言いながらも、ラビの指は、まだ私の手首を離していなかった。
「いいぜ、付き合ってやる。その代わり、オレが止めたら終わりな」
食堂が一気に沸いた。
「飲み比べだー!!」
「始まった!!」
頭を抱えているのは、アレンだけだった。
「止める人まで参加してどうするんですか……」
「オレが見てねぇと、こいつ一人で逃げるみたいに飲むだろ」
――見抜かれている。
誤魔化すように、グラスを持ち上げた。
「……何のことか分からないわ」
そう返して、酒を煽る。
「よーし、今日は無礼講だ!!」
「室長が一番楽しそう!!」
新しい酒瓶を抱えてきたコムイさんに、笑い声が上がる。その中で、またグラスに手を伸ばすと、ふとラビと目が合った。
「……まだ大丈夫か?」
「平気よ」
「なら、一杯だけ追加」
ラビは、自分のグラスにも同じだけ酒を注いだ。グラス越しに、翠の目がこちらを見ている。また酒を口に運んだ。